ニコン、新規事業躍進の屋台⾻ XTIA の「まっすぐ測れる⼒」が躍動

ニコン、新規事業躍進の屋台⾻

XTIA の「まっすぐ測れる⼒」が躍動

 

 世界で初めて光コムを産業用への適用を実現した東京工業大学発のベンチャー、XTIA(クティア)。ミクロンレベルから大型機械まで幅広いモノを高精度に測定することを得意としています。XTIAは装置開発だけでなく、大手企業における新規事業の屋台骨としても活躍しています。
その舞台が、高い技術力で100年以上にわたり業界をリードし続けているニコンです。
 ニコンには、デジタルカメラを扱う映像事業、露光装置を扱う精機事業、という二つの大きな柱となる事業があります。これに次ぐ新たな柱となる事業を実現することをミッションとして、2019年に次世代プロジェクト本部が立ち上げられました。世界で最も精密な機械と呼ばれる半導体露光装置の開発部からのスピンアウトであり、ニコンの持つトップレベ ルの高度な光学技術、そして半導体露光装置で培った超精密制御技術を組み合わせることで、今まで世の中 になかった新しい価値を提供しています。

ニコンの新規事業に欠かせないXTIAの測定力

 そこで作り上げられたのが、光による材料加工ソリューションです。その一つに、光による除去加工を用いた、世界に類のない加工ビジネスの実現があります。従来の機械加工では、熱影響や切削抵抗によって歪みが生じたり、微細加工が高コストであったりしました。光による除去加工装置を用いることで、歪みの発生しない微細加工が安価に実現できます。また、ドリルが入り込めない複雑な形状や隠れた箇所でも加工が可能であり、加工できる材料も多岐にわたるため、様々な分野でお客様の期待に応えられる可能性を秘めています。このソリューションを成立するうえで欠かせないのがXTIAの持つ高精度な測定技術でした。ニコン次世代プロジェクト本部第二開発課の

(株)ニコン次世代プロジェクト本部第二開発課  内藤兼行課長

(株)ニコン次世代プロジェクト本部第二開発課 内藤兼行課長

内藤兼行課長は「我々は大きなペインを抱えていました。XTIAさんと出会えたことで光による除去加工が実現できたのです」と評価します。

 このペインは、加工対象物を高速に、かつ高精度に計測する有力な技術です。超精密な加工をするには、 対象物の形状を超精密に測らないと始まりません。光加工はレーザーをレンズで集めて行います。虫眼鏡で紙に光を集めるやり方と同じ原理です。手がぶれると紙が燃えなくなるように、光加工でもミクロンオーダーの精度で、正確に焦点をあわせることが大事な要素となります。正確に焦点をあわせる範囲は、限られた箇所ではなく大きな面積であるため、これを高速にかつミクロンオーダーで測る技術が求められていたのです。

 ニコンは様々な技術を比較検討するなかで、光コム技術の可能性を見出します。光コム技術に造詣が深い専門家にお話を伺いながら、光コムを産業用に初めて実用化した企業としてXTIAに出会いました。ニコンの課題に対し、解決できる技術を持ち合わせるXTIAが出会った瞬間です。内藤課長は「いまや私たちの新規事業開発の中核を担ってくださり、屋台骨を支えていただいている」と高く評価します。

飛行機への加工にもミクロン単位の精度が不可欠

 では、具体的にどのように光コムを活用しているのかみてみましょう。その一例がリブレットと呼ばれる技術です。鮫は、皮膚に特殊な構造を持っているため、水中で速く泳ぐことができます。リブレットはこの生体模倣技術で、空気や水といった流体と接する面に数10 ミクロンから 100 ミクロン程度の微細な溝構造を加工することで、表面摩擦抵抗を減らし、燃費向上やCO 2の削減を実現できます。この適用先として、例えば飛行機の機体やガスタービンが期待できます。ただ、これらは非常に大型であり、さらに微妙な個体差が生じることがあります。XTIAの光コム技術によって個体の形状を高速に計測できることで、ミクロン単位での正確な加工が実現できます。

事業立ち上げにXTIAの対応力が貢献

 このソリューション開発を早期に実現するうえで、XTIAの対応力が功を奏しました。求められる技術要件をXTIAメンバーが正確に把握し、迅速に試作品を作ることで、スムーズにニコンの装置に技術を実装できました。内藤課長は「XTIA様のスムーズな対応により、すぐに実証し事業の骨格が出来上がりました。その背景として、光コムという要素技術にとどまらず、 XTIA様の技術者が優秀なことが大きいと考えています」と振り返ります。

 また、ニコンはXTIAの光コム技術と光加工機を組み合わせ、「同軸計測加工」という全く新しいコンセプトを生み出しました。加工対象物に対し、光コムの計測レーザーと加工に使うレーザーを重ねて当て、戻ってきた光のうち光コムのみを取り出すことで、加工とまったく同じ場所を計測することが可能になりました。

 従来の測定方法では、加工を行う場所が隠れて測れないこともありましたが、同軸計測加工により、どこでも正確に測れるようになりました。すでにニコンは同軸計測加工を用いた光加工機を既に複数実現し、さらなる応用技術の検討も進めています。

 

 ニコンは光による材料加工ソリューションを強化していきます。まだまだ越えなければならないハードルは数多く抱えていますが、

内藤課長はXTIAとの協業で乗り越えていけるとみています。「私たちの事業は大きく拡大していく段階です。XTIAさんと一緒に成長できると考えています」(内藤課長)。

 ニコンは「信頼と創造」という企業理念のもと2025年のありたい姿を「お客様の欲しいモノやコトをお客様にとって最適な方法で実現」することと定義し、新たな価値を創造し、収益を拡大していくことを中期経営計画に盛り込んでいます。XTIAは「正しく測る」光コムの技術を高めながら貢献してまいります。